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赤外線リモコン用デバイスを使った動体検知 (2)

赤外線リモコン用デバイスを使った動体検知(1)」で作製した装置を用いてハードウェアの検討・ 改善をしました。
ソフトウェア関連については「赤外線リモコン用デバイスを使った動体検知(1)」の内容を参照願います。(2023.05.16 ソフト更新済み。)

== 回路 ==

図1,2にIR送信機、IR受信機の回路を示します。
(2023.05.06 訂正) 回路図中 PIC12F8140 とありますが誤りです。 PIC12F1840-I/P が正しいです。

図1 IR送信回路
新IR送信回路.jpg

図2 IR受信・TWELITE送信回路
新IR受信TWE送信回路.jpg


・IR送信機は鳥や虫などの誤検知防止策(赤外線リモコン用デバイスを使った動体検知(1) 課題参照)として一つの検知線に2経路通信を行う場合を考え、それが2組使用できるよう4個のIR発光器を持つ構成です。(1経路通信で使う場合は例えば十字の4方向に送信する事も可能)
 IR送信機Aは信号発生回路と一緒なっていますが、必要に応じてIR送信器B~D同様の回路にして分離して用います。

・IR受信機は一つの2経路通信に2つの受光器で対応する場合を考え、それが2組使用できる構成です。

・実際に製作する際には送・受信機共に必要な分だけ発光器、受光器を接続すれば良いです。

・電源は電池では長期使用できないので、常用電源からのDC供給或いはソーラーパネルを用いた供給に限定しました。
ただ、ソーラーパネルで電源メンテナンスフリー化できるか否かはまだ検討を要します。

・ICSP(In-Circuit Serial Programing)対応はしていません。 PICのプログラムは別途行ってください。

・IR送信機は発光器を4組にすることで電流が増えたので3.3Vレギュレータを電流容量の大きいNJM12888F33 にしました。(NJM2871BF33でも動作可能かもしれませんが念のため。 2組まででしたらNJM2871BF33のままで構いません。)

・外付けIR送信器との接続ケーブルは長さ60cm程度でパルス波形確認しました。実際にはもっと長くしても問題ないと思いますがその場合は一応波形確認をした方が良いでしょう。
信号線がちょっと長くなったので74HC04出力とFETゲートには47Ωはサージ保護抵抗を入れてあります。

・IR受信機の電源電圧は、ニッケル水素電池の電圧が低下した場合より低い電圧まで使えるよう3Vに変更しました。
ただ、ニッケル水素電池は3.5V以下では電圧低下が早いのでレギュレータ電圧を3.3Vから3Vにしても延命時間は短いかもしれません。あまり期待しない場合は部品種類を増やすより3.3Vで共通化した方が良いでしょう。

・IR受光モジュールは3Vでも動作するデバイスに変更しました。これによって5V昇圧コンバーターも不要になりました。


== 構造 ==

手元にLEDレンズ(OEHW2045GF) があったのでIR LEDにも効果があるか実験したら38%到達距離が伸びました。

<2024.01.12追記>
このLEDレンズの効果の件は疑義があったので広い場所で再測定をしたところ、レンズ無しが19m、レンズ有りが14mでした。
LEDは前回同様OSI5FU5111C-40(秋月電子で購入)を使用したのですが、このLEDは元々指向性が強くこれ以上絞り込むと検出範囲の余裕がなくなってしまうのでそのまま使うのが良いと思います。
因みに、赤色レーザーをレンズの中央に当てたところ光が拡散してしまい、点状の輝点は見られませんでした。
レンズはある程度広がりを持ったLEDには絞り込み効果があるが、指向性の強いLEDの場合は逆効果のように思います。 <追記終>

【データ】  条件: IR LED1個 50mAパルス、 IR受光モジュール SPS440E 到達距離: レンズ無 16m -> レンズ有 22m (38%up)

これを使ってIR送信機を作ってみました。(写真1) 実測はしてませんが、LED2個ですのでその光がうまく集光できれば理論上の到達距離は31m (IR受光モジュールにSPS440E使用時)になります。 ただ実用距離10m程度であればレンズが無くても問題なく使えるので、レンズ無しの方が作りがコンパクトになって良いと思います。

写真1
LEDレンズ取り付け.jpg


・IRモジュールは背面・側面を金属でシールドされているので「赤外線リモコン用デバイスを使った動体検知(1)」でやったようなケース内部のIR遮光シールド(アルミ蒸着フィルムを使った)は不要です。
またシールドのレンズ表面に十字になっている部分を切り取ったところ10%検出距離が伸びたのでこの部分は切り取ることにしました。(写真2)

【データ】
条件: IR LED2個 50mAパルス、 IR受光モジュール OSRB38C9AA
到達距離: オリジナル 24m -> 十字部分除去 26.5m (10%up)

写真2
受光モジュール加工.jpg


・IRモジュールの防水対策として遮光筒先端をアクリル板でカバーすることにしました。
ただしアクリルなら何でもよいというわけではない(減衰率が異なる)ようなので、確認が必要です。
以前ソーラーパネル表面保護に使ったアクリサンデー板(アクリル板、 強化透明 IR001 SS 1, 1mm厚)が手元にあったのでIR到達距離を調べたところ、板の有無で有意差が無かったので今回はこれを使いました。

・IR受光ユニットの製作方法はこちらです。


(参考)
 受光部に焦電センサー用フレネルレンズAE-01(AK-FL1) を付けた場合受信距離がどうなるかを前記事で作った装置で測定したのですが、結果はレンズを付けない場合とほとんど変わりませんでした。
しかし、元々このレンズに受光モジュール(SPS440E)はフィットしないので モジュールの取り付け位置がレンズの焦点距離より後ろにずれた位置にありました。(多少の集光効果は出るだろうと期待したのでしたが駄目でした。)
今回小さい受光モジュール(OSRB38C9AA)を使い、レンズの内側をナイフで削って焦点位置に近い点に来るように取り付けて測定したところ、レンズなしで24mであったところがレンズを付けることで32mまで伸びました。

【データ】
条件: IR LED2個 50mAパルス、 IR受光モジュール OSRB38C9AA
到達距離: オリジナル 24m -> AE-01(AK-FL1)付き 32m (33%up)

残念ながらこのレンズは現在では購入できず、またモジュールを取り付けるための加工が厄介なので実用的でないのですが、技術的な可能性の確認ができました。


== 設置上の注意 ==

・IR受光モジュールに太陽の直接光または反射光が入ると検出エラーを起こすので遮光筒を付け、また設置方向もそれらが入り込まないような向きにしてください。(受光モジュールを太陽や反射点に向けない、受光側を少し下向きし 送信側を少し上向きにするなど。)

・家電製品で使う赤外線リモコンの光が入ると検出エラーを起こします。 また、当装置の発する赤外線が家電製品の受光部に入ると家電製品のリモコンが利かなくなる恐れがあります。 これらのことを考慮して設置してください。(住宅地では隣家への影響も考慮することが必要です。)

・到達距離は雨や雪、 レンズやアクリルカバーの汚れ、設置方向の変化などによって変わるので、これらを考慮し 最大到達距離(ご自身で作ったもので確認してください) に対して余裕のある距離で実用してください。 (赤外線の到達距離は環境条件によって変わるので、記事内のデータは参考値としてください。)

・誤検知対策で2経路通信を行う場合は設置時に各径路ごとに通信ができていることを確認してください。 (一方経路のIR送信器、IR受信器に遮光をして送受信しないようにし、他方の経路の通信確認をする。 次にその逆を行い、2経路共に個別の通信ができていることを確認する。)


== ソーラー電源 == <2021.12.12 当項目追加>

IR送信機に送信器を4個全て付けてソーラー電源で動作させてみました。
パネルはSharp LR0GC02で、ニッケル水素電池は図1の回路図に示す単三3本ではなく 安価なPanasonic のHHR-P104 (100円 秋月電子、専用ケース必要)を1個使ってみました。
12月中旬の日照条件で昼頃の1時間日光直射、それ以外の時間は上空の散乱光を受光した結果、1日の放電量と充電量がほぼ同じでした。

IR受信&TWELITE送信機には受光器4個を取り付け全てにIR光を当て動作させました。(IR光を当てないと静止電流のみなので実用時のシミュレーションにならないので注意。)
こちらもニッケル水素電池にはHHR-P104を使いましたが、消費電流が送信器より大きいので2個並列にしました。
12月中旬の日照条件で昼前後の約3時間直射日光を当てたら1日の消費電流を取り戻せていました。

曇りや雨の日もあるので晴れた日にある程度余剰電力を蓄えることが必要です。
晴れの日の率が3日に2日として(厳しめですが)、1日充電できない日を2日の晴天日で賄おうとすると日光直射時間は150%必要で、IR送信機は1.5時間、IR受信&TWELITE送信機は4.5時間が目安となります。
(横浜の気候条件でです。 また あくまでも目安なので、電源メンテナンスフリー化の可能性はあるが保証できる日光直射時間値ではありません。)
なお 散乱光によっても多少充電されているので、日中の直射日光受光以外の時間はある程度散乱光受光ができていることも必要です。

余剰電力の蓄電量が少ないと天気の悪い日が続いた場合電圧が低下して回路動作ができなくなるので、通常ある程度大きい蓄電容量のニッケル水素電池を用いて電圧低下速度を遅くし、できるだけ電源を長持ちさせるようにします。
回路図には 2000mAh のニッケル水素電池を指定していますが、実験ではコストの関係もあり880mAhの蓄電池を使ってみました。 (IR送信機は1個、 IR受信&TWELITE送信機は2個並列使用)
IR送信機、 IR受信&TWELITE送信機共に天気が悪い日が5日間程度連続しても回路動作に必要な電圧を維持できそうなので、蓄電容量的にはそれぞれ880mAh、 880mAh x2並列でも使用可能だと思います。 
 
ただ充電時には充電電流に対しある程度の蓄電容量が無いと電池寿命が短くなるようなので、その点ではIR送信機の880mAhは小さいかもしれません。 (夏場の過充電を経た後にどうなるかが気になる) しかし、電池寿命が1年持たないこともないでしょうし、元々安い電池(100円)なので使えなくなったら交換しても良いと思い実験しています。
金銭的に余裕があるのでしたらIR送信機、 IR受信&TWELITE送信機共に 単三の2000mAh以上のものを使えば、十分な蓄電容量と過充電対応ができて良いと思います。

IR送信器、 IR受光器の数を減らせば必要な充電量(直射日光受光時間)を減らすことができます。
ただし、PICやTWELITEの電源が必要なのでIR送信器、 IR受光器の数を1/2、1/4に減らしてもそれに応じて必要な充電量が減るわけではありません。


== 後記 ==

 雨で赤外線通信が瞬断して誤検知をある程度発生するものと思っていたのですが、意外にも発生しないです。 先日雨が強くて衛星放送が受信できなくなりましたがこの装置の赤外線通信はできていました。 (IR LED2個 500mAパルス、 レンズなし、 通信距離約10m)
家の庭に設置して実用しようと思い、今後ソーラー電源の能力確認をしようと思っています。

 焦電センサーに比べると検出ラインがはっきりしていて(送受信機を結ぶ直線上)、この直線感が気持ちが良いです。
焦電センサーではセンサー前方をある程度横断移動しないと検出されませんが、この装置では体1つ分でも遮断すれば検出されるので検出範囲(幅)が狭い所に設置するのに適していると思います。


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