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圃場侵入者の検知通報装置 (1/2)

 畑や果樹園などで収穫期に盗難に遭うことが良くあると聞いたので、もし役に立てられればと思い これまでの「趣味の電子工作」の経験を活かして表題の装置の実験機を作ってみました。
システム構成上の接続可能な無線デバイスやセンサーの数が多いので個人の趣味レベルでは十分な検証はできませんが、実用できるという感触はあります。しかしもし製作される場合は少ない子機と孫機から始めて確認しながら徐々に増やしてください。場合によっては接続デバイス数を減らすなど必要になるかもしれません。

(システム)
 検知点からの情報はMONO TWELITEという2.4GHz無線送受信モジュールを使って自宅等に送信しますが、畑や果樹園(送信点)と家(受信点)との距離が数百m離れている場合 アンテナの高さは 2, 3m必要になるようです。
一方人感センサーは1m程度の設置高なので、この高さにTWELITEを置くと通信距離は良くても100m程度と短くなってしまいます。
解決策としてセンサー回路とTWELITE子機とをケーブルでつなぐということも可能ですが、ハンドリング面やセンサー設置場所の自由度などの点からちょっと不便そうです。
そこで、センサー回路からTWELITE子機への通信を315MHzの微弱電波で行う方式を考えました。(図1)

図1
センサー通信.jpg

写真1 実験中の装置
子機孫機写真.jpg

315MHzの無線送信モジュールは、技術基準適合認証(技適)が取れているデバイスは高価なので取れていないものを使いました。市販されている技適の取れていない送信モジュールにはかなり出力の出るものもあり、使い方次第では違法になりますので注意が必要です。
今回は数mの距離で受信できる程度にしてあります。あまり遠くまで届く場合は電波法の問題以外に他の子機と孫機との通信に妨害を与えることがあるので良くありません。

親機はRaspberry piを使ったこちらの記事「Raspi3&3.5"Monitor一体型ユニットの製作」の物を使っていますが、この構成のものでなくてもRaspberry piとTWELITEさえ接続できていれば検知した場合のインディケータの画面表示は可能です。 (ただし プログラムがエラーストップしないようにするには pigpioライブラリのインストールと起動が必要です。)

システム構成上は親機とTWELITEで通信できる子機は最大16台、各子機と315MHz通信で接続される孫機は7台、そして孫機は2個まで焦電センサーを持てるようになっています。
したがって親機は最大224個の焦電センサーの検知情報を受信できることになります。
個々のセンサーを単独で検知させた場合は問題なく親機は受信できると思いますが、いくつものセンサーがほぼ同時に検知した場合には孫機と子機、子機と親機のそれぞれの通信で混信が発生して正常な通信ができず検知信号を取りこぼすことがあり得ます。 また親機のコンピューターの処理が間に合わずに行われなくなることも考えられます。
このような事から、実際に最大いくつの子機・孫機に対応できるかは検証しない事にははっきり言えません。
ただ、短時間に複数のセンサー検知があったとしても全ての検知信号が無効になることは無くいくつかの信号は受信されると思います。 どのセンサーが検知しているかがわからなくても侵入者検知があったという事が分かるだけでも有意義であると思います。


(製作)
子機・孫機の製作関連資料は以下で参照・ダウンロードしてください。
回路図
センサーユニットの製作 (2022.08.13修正)
孫機の製作
子機の製作
PICプログラム
<2023.10.02記>「PICライター(PICerFT)の製作」でPICライターの自作方法を紹介しています。

・センサーはPanasonicのPaPIRsセンサー EKMC1603111(520円)のレンズを改造して使用しています。かつての測定では検出距離は15m ありました。(「猿検知装置用センサーの代替品」参照)

・315MHzの送信モジュール、受信モジュールは ストロベリー・リナックス で購入したもので、台湾製です。
(送信モジュール: #82003、受信モジュール: #82006、それぞれ約480円。)

・子機・孫機共に PIC12F1840を使っています。
固有の番号をプログラムに書き込むので個体毎にソースコードの編集が必要です。

・子機は315MHz受信回路が常時5mA程度消費しているので乾電池は使えず、300mWクラスのソーラーパネルを使った電源にしました。

・孫機のケースは排水用塩ビパイプ(VU管 呼び径40) とキャップ、ソケットを使用。
子機のケースは 80x80x40 のTAKACHI製プラスチックケースを使用。
<参考> 塩ビパイプ(VU管)への電池収納形態 


(回路)
孫機の動作フローは次のようになります。
1.焦電センサーの検出信号またはTC7F14Sからのトリガー信号がPICに入力される。
2.PICはスリープから復帰する。
3.PICはRF315M用の3.3V電源を立ち上げる。
4.PICはセンサーコードと電池電圧状態を含むデジタル信号をRF315Mに出力する。
5.RF315Mは子機に315MHzで送信する。
6.PICは3.3V電源をOFFする。
7.PICはスリープモードに入る。

子機の動作フローは次のようになります。
1.PT4317はRF315Mからの信号を受信・復調してデジタル信号をPICに入力する。
2.PICは受信した孫機番号・センサー番号に応じたアナログ電圧をTWELITEのAI2(ADC入力)に出力する。(孫機番号、センサー番号と電圧の関係を予め決めてある)
3.PICは孫機の電池電圧状態に応じた信号(H/Lの2値)をTWELITEのAI3(ADC入力)に出力する。
4.PICは 孫機センサーの検出信号の場合はTWELITEのDI1を、孫機の定期通信の場合は DI2をアクティブ(LOW)にする。

孫機の電源は 穫時期のみの設置を考え単三アルカリ乾電池3本で3か月程度の寿命を目標にしていましたが、単四で実験したところ1か月経っても電圧が4.2V以上ある(下限3.4V)ので目標はクリアできそうです。 (Panasonicのアルカリ乾電池寿命比較によると単三は単四の2.5倍程度ある。)

孫機の電池にニッケル水素電池を用いた場合は5V電源をつなげば充電できるようにしてありますが(急速充電ではないので時間がかかり、放電状態によっては1日かかります。)、くれぐれも乾電池が使われている時には充電をしないように注意してください。

孫機の電池電圧状態の情報は、初めは孫機が検出をしたときに子機に送る検出情報と一緒でしたが これでは検出が無い状態が続くと電圧の状態が分からなくなってしまうのでやはり定期的に送るようにすることにしました。回路構成上スリープ中にPICのタイマーを使うモードは使えなかったのでTC7F14Sを使って周期10分ぐらいのパルス発生器を作り、PICで立下り検出割り込みをかけて定期通信トリガーにしています。TC7F14Sを2個使ったのは手作り作業性のためで、複数のインバーターが入ったデバイス1個でも問題ありません。
ただメーカーや型名が変わると周期が変わるので確認の上必要に応じて時定数を変えてください。 時間はPythonプログラムで受信ごとに時刻を表示できますので、インターバルが算出できます。
<2023.10.15記> ウォッチドックタイマーを使うと定期的にスリープモードから復帰できるようです。回路も簡素化できるので興味のある方は検討してみてはどうでしょうか。


(親機ソフトウェア・使用法)
参照・ダウンロードは以下で出来ます。
== Raspberry pi親機版 ==
親機ソフトウェア
使用法
設定ファイル作成方法

<2022.10.30追加>
== ESP32 親機版 ==
親機ソフトウェア
使用法
設定ファイル作成方法

 ESP32はSMTPサーバーへの接続が遅いので直接プロバイダーのサーバーへ接続するメール送信機能は付けてありません。「ESP32/ESP8266 から raspberry pi 経由でメールを送る」で示す PostfixをインストールしたRaspberry piで専用ソフトを使ってメール送信をすることは可能ですが、別途Raspberry piが必要になるので、できるだけ上のRaspberry pi親機版を使った方が良いでしょう。

<2023.04.09追記> ESP32版ではMap表示方式のソフトも作りました。「各種動体検知装置に対応した統合型親機」を参照してください。


(後記)
終わったと思ったら早速、改善できたらいいなと思うことが2つ出てきました。
=> 「圃場侵入者の検知通報装置 (2/2)」で対処しました。(2022.08.18記)

1.センサーAはセンサー回路とPICならびに無線送信回路が一体になっていてそのケースは塩ビ パイプにRTVで接着固定されているので、PICのプログラム変更をする際にはいつもRTVを取り除いてケースを外さなければなりません。センサーはあまり問題がなく取り外す必要が少なので、センサー部は分離した方が良いと思います。
「PICならびに無線送信回路部」とセンサーB 2つで構成する形にし、「PICならびに無線送信回路部」を入れたケースを塩ビ パイプに接着しないでパイプ内に置けるようにした方が良いです。

2.子機・孫機のPICプログラムが個体毎にソースコード編集が必要なのはやはり不便です。
ディップスイッチの設定などで対処できれば良いと思うので、検討してみたいと思います。

いずれも塩ビケースの高さが大きくなって格好が良くないですがやはり機能を優先すべきでしょう。


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